この春、能勢安穏寺の檀家さんから稲の苗を数束もらい、火鉢と睡蓮鉢に植えて育てていましたが両方とも良く育ちました。
 火鉢に植えた苗の方が育ちが良く、8月末の「輝きいきいき作品展」の会場にも飾り来場者を驚かせ、大変喜んでいただきました。さらに、9月には稲穂が日々変化するのを楽しく眺めていました。
 そんなある日、よく実った稲穂が誰かにいたずらをされたように折れ曲がっています。防犯カメラで確認しても稲穂に近づいた人影が写っていません。
 誰がこんないたずらをしたのだろうと思いを巡らせていましたが、その犯人が雀であることに気づきました。子供の頃、田んぼに案山子を立てたり、雀おどしの「ドーンドーン!」という大きな音を立てて雀を追い払っておられるお百姓さんを思い出しました。
 全て雀の餌になっていたのです。
 そこで睡蓮鉢の稲穂は玄関に取り込み、雀の襲撃から護ってやりました。都会のど真ん中で日々頭を下げてくる稲の実りを日々鑑賞できる喜びを堪能しました。
 よく実った稲穂は、12月22日の冬至に本堂御宝前にお供えした後、鉢を庭に出して雀にご供養することにしました。しかし、用心深い雀はこの日お寺で行事があり人の気配がするので集まってきませんでした。
 翌朝「チュンチュン」「チュンチュン」という雀の声に「雪見障子」を開けて覗いてみると稲穂をついばむ嬉しそうな雀の姿がありました。稲穂に群がる雀の姿に至福の喜びを感じ、良い年を迎えられるような、そんな気がしました。


このページを閉じる